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PLGAナノ粒子についての疑問

PLGAナノカプセルが育毛以外に期待できる効果

辻本広行 博士(工学)

辻本広行 博士(工学)
PLGAナノカプセルは育毛剤以外に、クリームなどの化粧品にも配合されています。では、育毛以外にどのような効果が期待できるのか?化粧品に配合した際に期待できる効果について紹介いたします。

Profile : ホソカワミクロン株式会社 取締役 執行役員 マテリアル事業本部長

PLGAナノカプセルの高い浸透力と持続力が美肌の形成にはたらく

PLGAナノカプセル配合化粧品は、PLGAナノカプセルの高い浸透力により、下記の図のように、化粧水(有用成分水溶液)やパック(有用成分含有パップ剤)と比較して、有用成分を角質層のより深い層まで浸透させることができます。

PLGAナノカプセルの高い浸透力と持続力が美肌の形成にはたらく

また、PLGAナノカプセルは肌の内部へ持続的に成分を届ける力があることも、実験により証明されています。
肌の透明感を高めるとされているVC-IP(油溶性ビタミンC誘導体)を封入したPLGAナノカプセルと、VC-IP(油溶性ビタミンC誘導体)配合乳液(O/Wエマルション)の成分持続時間の検証を行った結果、PLGAナノカプセルでは乳液と比較して10倍の浸透量が確認されました。また、肌内部におけるVC-IPは一般的な乳液の場合7時間で消失したことに対し、PLGAナノカプセルでは48時間以上検出され続けました。

ターンオーバーの正常化効果

PLGAの構成成分でタンパク質の分解成分でもある乳酸やグリコール酸はAHA(α-ヒドロキシ酸)と呼ばれ、保湿効果に加え、皮膚バリアである角質層のピーリング(剥離)作用をもち、角質細胞の代謝(ターンオーバー)促進効果があります。こうした効果はPLGAナノ粒子を塗布する試験でも実証されており、例えば、PLGAナノ粒子を0.1wt%配合したW/Oクリームを2週間以上続けて使用して評価した結果、角質層のターンオーバー速度は無処置群と比べ26%、クリーム単独群と比べ5%有意に向上していました。AHAを用いた美容法では時に過度な角質剥離や刺激に繋がる例もありますが、分解性基剤であるPLGAナノ粒子の配合品では、皮膚内部で持続的かつ穏やかに分解成分としての乳酸とグリコール酸が作用していくため、ターンオーバーの乱れや遅れの状態の改善を、刺激等なく適度に促すと考えられています。

PLGAナノカプセルの様々な受賞実績

辻本広行 博士(工学)

辻本広行 博士(工学)
PLGAナノカプセルの受賞歴や参加したナショナルプロジェクト、PLGAナノカプセルの技術が紹介された技術資料についてご紹介いたします。

Profile : ホソカワミクロン株式会社 取締役 執行役員 マテリアル事業本部長

ナショナルプロジェクト

  • 1.「生体適合性高分子ナノコンポジット粒子を応用したDDS開発 (NEDO:基盤技術研究促進事業(2001~2004年度))
  • 2.「新規核酸医薬SMAPデコイの医薬品原体としての開発」
    (近畿経済産業局:地域新生コンソーシアム研究開発事業(2007年度))
  • 3.「再狭窄予防を目的とした薬剤溶出型PTAバルーンカテーテル
    (NF-κBデコイコーティング)の研究開発」
    (NEDO:基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発(2007~2008年度))
  • 4.「先端技術(医・工・薬・ナノ)融合のインテリジェントナノDDS制御技術開発に基づく 低浸透血管内医療システム(分子標的医薬溶出・生体吸収性ステントetc)の 創製と臨床応用 (厚生労働科学研究費補助金:医療機器開発推進研究事業(2007~2009年度))
  • 5.「新規核酸ハイブリッド-スマップデコイの医薬品原体としての開発」
    (近畿経済産業局:地域イノベーション創出研究開発事業(2008~2009年度))
  • 6.「我が国発世界標準の生体完全吸収性ナノテクDDSステントの開発」 (財団法人 テルモ科学技術振興財団:特定研究助成(2008~2010年度))
  • 7.「虚血肢治療用低浸透ナノ粒子製剤の実用化」
    (内閣府・文部科学省・厚生労働省・経済産業省:先端医療開発特区 (スーパー特区)(2008~2012年度))
  • 8.「薬剤溶出型PTAバルーンカテーテルの開発」(NEDO:次世代戦略技術実用化開発助成事業(2009~2010年度))
  • 9.「核酸含有PLGAナノ粒子技術を用いた経口DDS製剤の研究開発」
    (近畿経済産業局:地域イノベーション創出研究開発事業(2010~2011年度))

PLGAナノカプセルを製造しているホソカワミクロン

商号 ホソカワミクロン株式会社
創業年月日 大正5年4月18日(設立 昭和24年8月13日)
資本金(H28年9月末) 144億9,600万円
従業員数(H28年9月末) 単体 362名、連結 1445名

ホソカワミクロン株式会社は、1916(大正5)年、大阪市西区に立ち上げた小さな鉄工所「大阪タービン水車製造所」から始まりました。そして、創業者細川永一が1930(昭和5)年に発明した画期的な微粉砕機「ミクロンミル」を礎に独自の粉体技術の道を一筋に歩んできました。

この微粉砕技術は、医薬品や化粧品、鉱物や金属粉、食品など様々な分野で用いられ、2000年からマテリアル事業として新素材の開発、化粧品の製造等を行うようになりました。2002年の国際ナノテク総合展では第一回ナノテク大賞を受賞しましたが、機械メーカーからこの分野での受賞は、快挙であったといえます。

2004年7月には、PLGAナノスフィアの製品化を担う製薬・美容科学研究センターが創設され、本ナノスフィアの実用化のためのスケールアップやGMP生産、独自のナノスフィアのコンポジット化技術を開発し、DDSに関する受託研究・製造と化粧品・育毛剤事業を立ち上げました。2007年には世界初となるPLGAナノ粒子量産工場である五條工場(奈良)において、医薬部外品製造業許可を取得致しました。これにより、自社及びOEM商品や化粧品原料バルク用のPLGAナノ粒子を開発・製造することが可能となっております。